子供の発熱と解熱剤の適切な使用法
子どもは、よく発熱するものです。そんなとき、すぐに病院へ行ければよいのですが、夜中であったり、発熱外来が混み合っていて予約できなかったりと、すぐには受診できないこともあります。
今回は、子どもの熱に対応する方法や解熱剤の選び方、そして感染予防のためにできる対策について解説します。
目次
子どもの一般的な熱の原因と症状
子どもの発熱は、主にウイルス感染が原因で、細菌が原因の場合は比較的少ないです。1年中さまざまなウイルス・細菌による感染症が流行します。
流行しやすい感染症とは
子供の熱の一般的な症状や影響
自分でだるさなどを訴えられる年齢であればよいのですが、未就学児など小さな子どもの場合はなかなか気が付かないということもあるでしょう。以下のような状態・症状があれば、まずは熱をはかってみてください。
- なんとなく元気がない
- ぐずっている
- 機嫌が悪い
- 食欲がない
- いつもより食べない
- 水分をとらない
- なかなか寝ない
生後3か月未満の発熱は受診を
子どもの発熱で1つ注意しておかなければならないのは、生後3か月未満の子どもは基本的に発熱しないということです。
お母さんからもらった免疫があるので、生後3か月未満で発熱することはほとんどありません。
もし発熱した場合には重篤な細菌感染症の可能性があるので、医療機関を受診しましょう。
38度以上でぐったりした状態であれば、夜中でもすぐに受診するのが望ましいです。
ただし、赤ちゃんは自分で体温調節をする力が弱いので、暑さで熱がこもっているだけということもあります。洋服やエアコンなどを調整し、30分くらい経ってからもう一度熱をはかってみてください。
熱を正確に測定する方法
子どもの熱をはかるときは、正しく測定しましょう。
体温計の選択方法
どのようなものでもかまいませんが、ワキに挟んで測定するもの(接触式)と、数秒ですぐに測定できるもの(非接触式)で2種類用意しましょう。
子どもはじっとしているのが難しいので、すぐに測定できる非接触式があると便利です。ただし、非接触式は少し誤差があるため、ワキに挟むタイプも手元にあるとよいでしょう。
正しい測定方法
ワキに挟むタイプでは、正しい方法で測定することが大切です。
- 汗で濡れていると正しく測定できませんので、ワキの汗を拭き取ります。
- 体温計の先端を、ワキの中心部にしっかり当てます。下から斜めに当てて、押し上げるようにするのがよいです。先端がワキから出ないように、注意してください。
- 食事やお風呂、遊びのあとでは体温が高く出ることがあります。しばらく安静にさせてから測定しましょう。
解熱剤の選択と正しい用量の決定
子ども用の解熱剤としては、どのようなものを選べばよいでしょうか?
解熱剤の選び方
基本的には、「アセトアミノフェン」という成分がおすすめです。医療機関でも、ほとんどの場合、子どもにはアセトアミノフェンが使われます。
なお、総合感冒薬(かぜ薬)は、咳止めや鼻水止めなどさまざまな成分が入っているのがメリットでもある一方、不要な成分をいくつも体に入れることにもなってしまうため、あまりおすすめはできません。
便秘や眠気・口の渇きといった副作用が増えてしまいます。子供にはシンプルに解熱成分だけの薬を使うのがよいでしょう。
また総合感冒薬には解熱成分が入っているため、総合感冒薬を使う場合には解熱剤を併用しないでください。
2019年からは、12歳未満の子どもに咳止め成分の「コデイン」を使用するのは禁止となりました。今市販されている市販薬にはコデインが含まれていませんが、もしご自宅に古い総合感冒薬や咳止めがある場合には成分を確認してください。
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解熱剤の使用のタイミングと注意点
解熱剤は、「熱があってつらそうなとき」に使います。「熱があるからとりあえず」、「時間になったから」で使うわけではありません。
熱があるからといって、必ずしも解熱剤が必要ではないと知っておきましょう。微熱で元気にしているのであれば、使わずに様子をみていてもよいです。
また、解熱剤を使ったからといって「熱性けいれん」の予防ができるわけではなく、解熱剤の効果が切れて熱が上がるときに熱性けいれんが起こることもあります。
お子さんの様子をみて保護者の方がつらそうだと感じた場合や、本人からつらいと訴えがあったときに使いましょう。
解熱剤以外の熱の対策
解熱剤を使う以外に、子どもの発熱時におこないたい対策を紹介します。
水分補給
熱があって、水分もしっかり取れないということがあるかもしれません。
比較的、元気のあるときは飲みたいだけ飲ませてあげてください。
あまり元気がなく、水分を摂りたがらないときは、一度にたくさん「ゴクゴク」飲ませず、少しずつで大丈夫です。水・麦茶・イオン飲料・ゼリー・氷などを与えてください。
一度にたくさん飲ませると吐くことがあるので、スプーンでひとくちずつくらいの量で根気強く飲ませるようにしましょう。
室温や服装の調節
子どもは体温調節が大人ほどうまくできないので、大人が心地よいと感じるよりも少し室温を下げた方がよい場合が多いです。
服装も、赤ちゃんであれば大人より1枚少ないくらいでちょうどよいといわれています。
また、背中や頭に触れ、汗をかいていたら、はやめに着替えさせることも大切です。
熱を予防するための健康習慣や予防策
子どもが発熱するのは仕方ないとはいえ、そもそも感染症を予防するために日々取り組みたい習慣について確認しておきましょう。
手洗い・うがいの重要性
手洗い・うがいを欠かさずおこないましょう。
ウイルスや細菌に対しては、石けんを使った手洗いやアルコール消毒が有効です。コロナ禍で手洗い・うがいの習慣がついた方も多いと思いますので、よい習慣は続けていきましょう。
また手洗いは、思っているよりも時間をかけて丁寧におこなう必要があります。「手洗い歌」に合わせておこなうと、楽しく続けられそうですね。お試しください。
適切な予防接種
予防接種で防げる感染症は、いくつもあります。定期接種のものはもちろん、任意接種のものも接種をご検討ください。
任意接種のワクチンとしては、以下のようなものがあります。
- おたふくかぜワクチン
- 髄膜炎菌ワクチン
- インフルエンザワクチン
十分な休息と睡眠
子どもの睡眠時間が短いと、風邪をひきやすい傾向にあるのではないかと考えられています。
人は、寝ている間に免疫の機能を回復させているためです。成長ホルモンも、寝ている間によく分泌されます。
子どもにとって、感染症の予防以外にも睡眠はとても大切なものといえます。
近年、子どもの睡眠時間は短くなる傾向にありますので、あまり夜更かしさせず、規則正しい生活リズムをつくってあげるようにしましょう。
医療機関が空いていないときの相談先
子ども医療電話相談「#8000」
「かかりつけの小児科の発熱外来の予約がとれない!」、「どこにかかったらいいの?」、「救急車を呼ぶかどうか悩んでいる」そのような方は、子ども医療電話相談「#8000」をご活用ください。
お住まいの都道府県の相談窓口に自動で転送され、小児科医や看護師にお子さんの状態について相談ができます。
都道府県によって、電話を受け付けている時間が異なりますので、こちらのページからご確認ください。
こどもの救急
「こどもの救急」というホームページでは、症状ごとにチェックリストを活用して、病院を受診すべきかどうか判断をサポートしてくれます。
どのような点に注目してお子さんの様子をみればよいかも分かりますので、ご活用ください。
まとめ
今回は、子どもが発熱したときに自宅にあると安心な解熱剤の選び方や、発熱時の対応・発熱時の相談先について解説しました。
発熱があっても、元気で水分が取れていれば、必ずしも解熱剤は必要ではありません。
子どもはよく発熱するものですので、慌てずに対応できるよう、今回ご紹介したアイテムや方法をご活用ください。
参考
監修漆畑俊哉(薬剤師)
- 株式会社なかいまち薬局 代表取締役社長
- 日本薬剤師研修センター 研修認定薬剤師
- 日本在宅薬学会 バイタルサイン エヴァンジェリスト
- 在宅療養支援認定薬剤師