セミナー

2023.11.17

【オンラインセミナー】在宅医療に取り組む前に備えてほしい2つのエッセンス(2023/11/07)

在宅医療に取り組む前に備えてほしい2つのエッセンス

日時

演題

在宅医療に取り組む前に備えてほしい2つのエッセンス

2023年11月07日(火)

主催

株式会社ユニケソフトウェアリサーチ・ノアメディカルシステム株式会社

方式

リアルタイム配信オンラインセミナー

概要

高齢者が住み慣れた地域で最期まで過ごせる「地域包括ケアシステム」の構築を国は2025年をめどに目指しており、これに伴い在宅業務を実施する薬局数は増加してきている。

本セミナーでは、株式会社なかいまち薬局(神奈川県足柄上郡)が行っている在宅医療の取り組みについて「薬剤師のタスクシフト・働き方を変える」・「薬剤師の専門性を活かす」の2つの側面から解説した。

1)薬剤師のタスクシフト・働き方を変える

始めに、薬剤師の業務をタスクシフトしていくためには、非薬剤師(調剤補助専門員、薬局パートナー)の活躍が欠かせず、これまでの事務員とは異なる薬剤師のパートナーのような役割が求められる。パートナー育成のためには、最初から理想的な人材はいないことを認識しておくことや、パートナーのやりがいを創ることが重要である。

タスクシフト時には、連続的な業務の一部を切り取るのではなく、チームで同じ目標に取り組む意識をもってもらうことがポイントで、チームビルディングの時間を設けて「業務を見える化」することが有効である。具体的には、横軸に重要性・縦軸に薬学的専門性を設けたマトリックスに業務を分類して、重要ではあるが薬学的専門性は低い領域に入る業務を、誰でも安全で効率的に、かつ均一に行えることを目指した。話し合いの時間を設けることはお互いの思いや考えを理解に繋がり、業務の整理や効率化ができるメリットが高まると考えられる。

以上のことから、薬剤師だけではなくチームが全員でゴールに向かってる状態を常に目指しており、「メンバーを信頼し他の誰かのために120%を発揮しているか」とチームスローガンを掲げていることを解説した。

2)バイタルサインと薬剤師の役割

次に、薬剤師の専門性を活かす手段としてバイタルサインの重要性が解説された。薬剤師がバイタルサインを理解して客観的に評価することは、患者がこの薬を使って次回までどのような経過をたどるか予測できる薬剤師の強み(薬学的専門性)を活かすことにつながり、薬物療法の構築・別視点での提案に説得力を持たせることができる。

バイタルサインの聴取は、体温・血圧・脈拍・酸素濃度の測定だけでなく、聴診器を使用した腸蠕動音・呼吸音の聴取、浮腫・皮膚・口腔内の観察など多角的な視点で行う必要がある。バイタルサインを薬剤師自身が得ることは、医療者の共通言語を手にいれるために重要なステップであることを説明した。

実際になかいまち薬局では、在宅に携わる薬剤師全員がバイタルサインの測定ができ、実習生とともに「薬局ができる在宅医療の明日」に取り組んでいることを紹介した。

3)多職種との関わり

在宅医療では多職種との関わりが重要で、「顔が見える関係」を超えた「肚(はら)の見える関係づくり」を目指していく必要がある。私たち薬局では日々、「どのような薬物治療を提供したいと思っているか」など思いや提案を積極的にアウトプットしている。

チームにおける薬剤師の役割は副作用、過量投与、漫然投与をチェックして最適な薬物療法を提案することが中心だが、肚の見える関係を構築することで、「あの薬剤師ならこうしてくれるだろう、聞いてみよう」と頼ってもらえる存在になり、生活での注意点や食事、家族との関係など職能を超えた役割やコミュニケーションを求められることにつながると考えている。

よくあるケースとして、「薬局には処方箋がないと行きづらい」「まだ介護状態じゃないから相談しにくい」といった介護関係の方からお声を頂くが、依頼・相談に対するハードルを下げるために、地域薬局は自ら連絡先(メールアドレス、SNS)を書いた名刺等を用意し、気軽に双方向コミュニケーションを図ることが求められる。

また、依頼がきた時の心構えとして必要なことは以下のパターンを参考にしてほしい。

  1. 受け付ける(迷ったら「Yes」を選ぶ)
  2. 難しい場合でも条件を付けて受け入れる(「Yes,but…」)
  3. あの人のためになんとか力になりたい「喜んで」

保険調剤の流れも対物から対人へと変化しており、薬を渡した後、次回の服薬指導まで継続的に把握するフォロー、アセスメント、フィードバックが求められるようになっている。

兎にも角にも、薬剤師の目的は薬を渡すことではなく「健康にさせること」である。目的を忘れずに、薬局外や多職種に薬剤師の個性をアピールしながら目標をもって取り組めるチームを作り、バイタルサインを活用して専門性を発揮していくことを実践していきましょう。

執筆者漆畑俊哉(薬剤師)

漆畑俊哉(薬剤師)
  • 株式会社なかいまち薬局 代表取締役社長
  • 日本薬剤師研修センター 研修認定薬剤師
  • 日本在宅薬学会 バイタルサイン エヴァンジェリスト
  • 在宅療養支援認定薬剤師

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