ゲームがやめられない!インターネット・ゲ一ム障害の診断・治療方法
ゲームに没頭し、食事や睡眠がおろそかになるなど日常生活に支障をきたす病気を「インターネット・ゲ一ム障害」といいます。
子どもも大人も注意が必要なこの依存症。実は治療の必要な「病気」とされます。本記事ではインターネット・ゲ一ム障害の診断・治療方法について解説します。
目次
ゲーム依存は「病気」。早めの対処がカギ
アルコール依存症、ギャンブル依存症という言葉がありますが、「依存症」とは、特定の「何か」に心をうばわれて、「やめたくても、やめられない」状態になることです。
アルコールやギャンブルだけでなく、「ゲーム」も人の心をうばう魔力があるようで、早めの対応がカギとなります。
厚生労働省の推計では、日本人の成人で約420万人、中高生で約93万人(2017年)もの人がネット依存が疑われる状態にあるといわれています。
日本では、アルコール依存症の患者さんが約100万人程といわれていますから、ゲーム依存はこれより多いということです。
ゲーム依存症とは
インターネット・ゲーム障害と言われ、『インターネット・ゲームに没頭する時間がだんだんと長くなる』、『ゲーム以外のことが考えられなくなる』、『食事や睡眠という日常生活さえおろそかになる』、など自分自身をコントロールできなくなる「病気」です。
アルコール依存症やギャンブル依存症と同じように、脳の神経回路が「ゲーム」という繰り返される快楽刺激により変化してしまいます。
ゲームにより気持ちよくなる快楽刺激は、脳の報酬回路を変化させ、ゲームがしたくてたまらなくなるという渇望を起こします。さらに、同じ快楽を得るためには、もっとゲームがやりたくなり、そのうち、ゲームがやめられなくなるのです。
ここには、脳内の快楽物質であるドーパミンが関わっていると考えられています。
インターネット・ゲームの魔力
なぜ、インターネット・ゲームは依存症が起きてしまうのでしょうか?
2018年から2019年に、高校生、大学生1,600名以上を対象としたオンラインアンケート調査によると、インターネット・ゲームを利用する目的として、「ひまつぶし」「気分転換」といった理由が最も高く、それだけ日常生活にインターネットが身近で、スマートフォンの普及により一層ゲームが利用しやすい環境になっているといえます。
さらに、「ネットゲーム上で仲間とのコミュニケーションのため」や「新たな友達をつくる」、「他のプレイヤーから尊敬されるため」「日々の悩みや不安を忘れるため」といった現実逃避的な目的もありました。
現実から逃避をして、インターネット・ゲームの世界では承認欲求を得て居心地がよいと感じるということでしょう。
依存になりやすいゲーム
同じオンラインアンケート調査によると、ロールプレイングゲームやリズム/音ゲーが高く、次いでパズル、アクション、シミュレーションがつづきました。インターネット・ゲーム障害の症状
日中の眠気、睡眠障害、起床困難
代表的な症状は、生活リズムの乱れです。
夜遅くまで、ゲームをし続け、次第に朝起きられなくなり、学校や仕事に遅刻する、欠席する、生活が昼夜逆転してしまうなどの社会生活を行う上での問題が起こります。
怒りっぽくなる
ゲームに依存していると、ゲームをしていない時にいわゆる「離脱症状」が出てしまい、ゲームができないことに対してイライラしたり、怒りっぽくなります。
家族がゲームをやめさせようとすると、暴言をはいたり暴力をふるったりと家族関係に問題が起こることもあります。物にあたって、壊すこともあります。
肥満、低栄養、骨が弱くなる
ゲームに集中するあまり、食事さえとらなくなることがあり、低栄養になることもあります。
長時間ゲームをするということはそれだけ「運動をしていない」ということです。
運動不足になると当然、体力が落ちます。
また、長時間のゲームで家から出ないと、日光を浴びないため骨が弱くなります。インターネット・ゲーム障害になると若いのに骨が弱い「骨粗鬆症」になる人もいます。
ドライアイ、頭痛、肩こり
長時間ゲームをすると当然、眼が疲れ、ドライアイや後頭部の痛みなどが出ます。
また、ゲームの画面を見るのに前屈みの姿勢になる人が多く、肩こりになる人も多いです。
課金などの経済的な問題
オンラインゲームでは、課金することで強いキャラクターや武器、便利なアイテムを使えることが多いです。
ゲーム内の課金により多額のお金を浪費する場合があります。
子供が親のクレジットカードを勝手に利用し、後から高額請求がくるといった事例も問題になっています。
一番の問題点は、健康や社会生活に悪影響がでていたとしても、ゲームに依存している本人が自分自身をコントロールできない点です。
インターネット・ゲーム障害の診断基準
不安な症状がある場合は、すぐに専門医療機関や専門家に相談するのがよいのですが、その前にご自身やご家族、周りの方で気になる症状がある場合は、「MIRA-i」というサイトで、ネット依存・ゲーム依存度チェックを受けてみてはいかがでしょうか。10~20問の簡単なテストで、診断結果がすぐに出ます。
インターネット・ゲーム障害と診断されたら
インターネット・ゲーム障害になると治らないのかと、心配になる人も多いと思いますが、インターネット・ゲーム障害に対する治療はどのようなものがあるか解説します。
認知行動療法
認知(考え方)と行動を見直し、修正していくという方法です。
自分はそうでないと思っていても実は依存症という方が多いので、まずは自分が今どういう状態かを理解することから始めます。
円グラフなどで1日の生活習慣を書くなどすれば、自分の生活を客観視することでどの部分を直すべきかが分かります。
薬物療法
実はインターネット・ゲーム障害に発達障害やうつ病などが合併していることがあります。
それらがある場合には、その治療を行うことで依存を解消することができます。
他にも、多くの人はゲームのしすぎで睡眠障害が問題となるので、無理矢理寝る(睡眠導入剤を使用する)のも一つの手です。
家族へのアプローチ
上述した治療以上に、重要なのはインターネット・ゲーム障害への家族の協力、理解です。
ゲームやスマホに依存しているからと、家族がそれらを取り上げるとインターネット・ゲーム障害患者は当然反発します。そうなれば家族間で仲違いし、インターネット・ゲーム障害患者自身が治療に積極的でなくなります。
それよりも、ゲームを取り上げようとしているわけではなく、体の心配をしていることを根気強く伝えましょう。
自身が治療に前向きになってもらう事がとても重要です。
治療キャンプ
インターネット・ゲーム障害症患者自身が、依存症であると認識できた状態であれば、1週間程度、ゲームやインターネットがない環境に行くのも効果的です。
その環境下で、カウンセリングや自然環境を生かしたアクティビティを行い、ゲーム以外にも楽しいことがあるのだと感じてもらう治療です。
すでにネット依存症に対して行われており、効果があると証明されています。
ただ、問題点としてやはり本人の自覚がないとだめです。
もし、無理矢理キャンプに行かせてしまった場合、キャンプから帰った時に今まで以上にゲームへ依存する可能性があります。本人の意思を確認した上で行うべき治療です。
ゲームに依存しないために
厚生労働省のゲーム依存症対策関係者連絡会議に出された資料によると、依存者は週に30時間(1日4-5時間)以上インターネット・ゲームを行っていると記されています。
ゲームを開始する年齢が低いほど依存しやすいこともわかっています。
対策として、インターネット・ゲームの使用開始年齢を遅らせる、使用時間を少なくする、まったく使用しない時間を作る、リアルの生活を豊かにするなどが挙げられます。
ぜひ、参考にしてください。
まとめ
スマートフォンの普及で、インターネット・ゲームへの接触が容易かつ低年齢化しています。
利便性のある半面、依存症という病気の元凶にもなり得るインターネット・ゲーム。適切に付き合っていく必要がありますね。
インターネット・ゲーム障害がうたがわれる場合、家族だけで悩みを抱え込まず、早めに専門家に相談することも大切です。
株式会社なかいまち薬局では、専門の医療機関や相談先のご案内も行っております。お気軽にご来店ください。
参考
監修漆畑俊哉(薬剤師)
- 株式会社なかいまち薬局 代表取締役社長
- 日本薬剤師研修センター 研修認定薬剤師
- 日本在宅薬学会 バイタルサイン エヴァンジェリスト
- 在宅療養支援認定薬剤師