冬の肌トラブルの原因と対策
ふだんは気にならないけど、冬になって顔の痒みが出てきた、マスクかぶれかも?など、顔の肌トラブルでお悩みの方はいませんでしょうか?
冬は、1年の中で特に乾燥がひどく、肌トラブルが増える時期でもあります。
今回は、冬に多い皮膚トラブルについて解説するとともに、効果的な塗り薬やケア方法について解説します。
冬の肌トラブルの原因
冬になって、かゆみ・赤み・ニキビなどの皮膚トラブルが増えていませんか?
実際、アトピーなどの皮膚疾患のない健康な女性39人を対象にした調査で、冬になると頬や腕の肌バリアが弱くなっていたということがわかりました。
そこで、冬の肌トラブルの主な原因を3つ紹介します。
乾燥
乾燥はかなり多くの方が悩む肌トラブルで、冬は寒さの影響で湿度が下がるほか、皮脂の分泌量が減って肌の水分が蒸発しやすくなります。
皮脂は悪者と思われがちですが、皮脂と汗でつくられる「皮脂膜」には、大切な役割がいくつもあるのです。
また冬になり皮脂膜が薄くなると、肌は外からの刺激に弱くなり、かゆみや赤みが出やすくなってしまいます。
冬も油断できない紫外線
冬になると紫外線を意識する方が少なくなりますが、実は冬でも、夏の半分程度は紫外線が降り注いでいます。
また、太陽の位置が低くなるため、冬は夏よりも顔に紫外線が当たりやすいです。
ちなみに冬の日焼け止めは、夏ほど強い効果のある商品でなくて大丈夫で、雪山でレジャーを楽しむのでなければ、SPF20、PA++程度もあれば十分です。
SPF:「日焼け後に肌が赤くなるのを防ぐ力」を50までの数値であらわしたもの
PA:日焼けによる長期的な影響、つまり「シミやシワの発生を防ぐ力」を4段階で表現したもの
日焼け止めは、適切な強さを選ぶこと・ムラなく塗ること・こまめに塗り直すことを意識しましょう。
マスクによる摩擦
毎日のマスク着用による摩擦も、肌トラブルの原因になることがあります。
マスクによって肌の角質が少しずつ削られると、外からの刺激に敏感になり、乾燥していることも相まって、よりダメージを受けやすい肌になるのです。
また、マスクの中は息で蒸れやすいですが、湿度によってアクネ菌が繁殖してニキビができたり、マスクを外したときに急激な乾燥を引き起こしたりと、肌トラブルの元になります。
蒸れると保湿効果があると思う方もいるのですが、じつは逆効果なのですね。
肌トラブルのセルフケア
肌トラブルを起こさないために、日常生活で注意できることを解説します。
しっかり保湿で乾燥予防
まずはなんといっても保湿が大切で、多くの国では1日2回以上は保湿剤を塗るように推奨しています。
塗る量は、「ティッシュがくっつくくらい」たっぷりがよいです。
また、こまめに手や顔に保湿剤を塗ることはもちろん、入浴後の保湿も忘れてはいけません。
入浴後は、皮脂が洗い流されていることから、水分が蒸発しやすく放っておくと、乾燥がすすみますので、できるだけ早く保湿剤を塗るようにしてください。
また、寒いからと温度の高いお湯で入浴してしまうと、皮脂やセラミドを落としすぎてしまい、乾燥のもとになります。
お肌のためには40度以下のお風呂がおすすめです。
なお、寒くなるとアトピーが酷くなるという方は、冬は石けんやボディソープの使用を少し減らしてみるのもよいでしょう。
冬はあまり汗をかきませんし、皮脂の分泌も少ないので、脇やデリケートゾーンなど気になる部分だけ石けんで洗い、腕や足には使わないというのもひとつの選択肢として考えてみてください。
紫外線対策と洗顔
日常的な日焼け止めは、SPF20、PA++程度のものを選びましょう。
外で長時間のウィンタースポーツなどを楽しむ場合には、夏と同じくらいの日焼け対策が必要です。
一般的に、日焼け止めは開封後の半年〜1年程度まで使用できますから、ウィンタースポーツをやる方は、夏に使用した日焼け止めを残しておくとよいですね。
保存料などの使われていないオーガニックタイプは期限が短いこともあるので、それぞれ確認ください。
また、日焼け対策をするのであれば、冬のクレンジングや洗顔にも気を付けたいポイントがあります。
こうしたポイントを意識して、冬のスキンケアをしてみましょう。
マスクにも注意
マスクが小さすぎると皮膚との摩擦が強くなるため、マスクかぶれにつながってしまいます。
サイズは、鼻の付け根から耳の付け根までの距離+3cmくらいの横幅のものが適切なサイズと言われており、マスクを着けたあと、鏡を見て正面から頬が見えていたら、マスクが小さいかもしれません。
また、ウレタンマスクや布マスクなどの洗って使うマスクの場合、柔軟剤や洗剤の洗い残しが肌荒れにつながることもありますので、水洗いを多めにする、内側に不織布マスクやガーゼを挟むなど工夫をしましょう。
あまり大きすぎても隙間ができてしまいますので注意してください。
肌トラブル対策に有効な塗り薬
肌トラブルの原因を減らしても、多少の肌トラブルは起きてしまうものです。
そこでドラッグストアなどで手に入る塗り薬で、肌トラブルにオススメの商品を紹介させていただきます。
ワセリン、プロペト
皮膚の水分蒸発をおさえる「ふた」のような働きの塗り薬です。
ワセリンは、少し黄色っぽいものと白いものがあり、白いものの方が、より不純物が取り除かれた刺激の少ないワセリンで、プロペト、ベビーワセリンとも呼ばれ、刺激が少なく誰にでも使いやすい塗り薬です。
乾燥がひどいところに、化粧水などで水分を補給してあげてから、ワセリンでふたをするイメージで使用します。あまり塗りこまず、ぽんぽんと馴染ませてください。
ヘパリン類似物質
ヘパリン類似物質には、「保湿・抗炎症・血行促進」の3つの作用があり、軟膏やローション、クリームとさまざまな形状の製品が売られているため、塗りたい箇所に合わせて選べる点が使いやすいです。
乾燥がひどい箇所は、しっかり保湿できる軟膏やクリームを使い、広い範囲にさっと塗りたい場合はローションがよいでしょう。
また、血行促進作用があるため、ウィンタースポーツなどで、しもやけになってしまった箇所にも使用できます。
冬の乾燥には「セラミド」も
肌の保湿には「セラミド」が有効です。
セラミドを含んだ保湿クリームは、肌荒れ改善・水分量改善・角質セラミド量増加などの効果を発揮することがわかっています。
またセラミドは、肌の角質層にもともと含まれており、肌の水分を保ったりキメを整えたりするのに役立つ成分なので、セラミドが十分含まれていないと、肌の乾燥やバリア機能の低下が起こってしまいます。
乾燥を防ぐには、化粧水などで水分を補充した後に、セラミドを含んだ保湿クリームなどを使うとよいでしょう。
ステロイド軟膏(薬剤師へ相談)
「かぶれ、湿疹に」とうたわれているステロイド軟膏も、ドラッグストアなどで手に入れることができますが、顔は皮膚が薄いため、強いステロイドは推奨されません。
また、ニキビなどの細菌が原因の皮膚トラブルが起きているときは、ステロイド軟膏を避けた方がよいです。
お買い求めの際は、症状にステロイドが必要か、ステロイドの強さは問題ないかなど、一度薬剤師へ確認下さい。
なお、あまりに症状が長引く、症状がつらいなどであれば、皮膚科の受診も検討しましょう。
マスクかぶれ、湿疹、寒冷蕁麻疹(かんれいじんましん)など、冬に生じる肌トラブルは多岐にわたりますので、ステロイドで炎症をしっかり抑え込んでから、保湿などの対策をしたほうがよいかもしれません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、冬に起きやすい肌トラブルの原因と対策について解説しました。
冬には、乾燥やマスクかぶれ、紫外線などが原因となって肌トラブルが起こることがあります。
入浴や洗顔などの日常生活でちょっとした工夫をする、塗り薬で保湿をするなどのセルフケアを実践してみましょう。
監修漆畑俊哉(薬剤師)
- 株式会社なかいまち薬局 代表取締役社長
- 日本薬剤師研修センター 研修認定薬剤師
- 日本在宅薬学会 バイタルサイン エヴァンジェリスト
- 在宅療養支援認定薬剤師