寒い季節に増える胃腸炎の原因と予防法

「朝晩の冷え込みが強まり、「そろそろ冬支度かな」と感じるこの季節。空気も乾燥してきて、体調を崩しやすくなっていませんか?
そんな時期に特に注意したいのが「胃腸炎」です。寒くなるにつれて感染性胃腸炎が増えるのはよく知られており、家庭内で一人がかかるとあっという間に広がってしまうことも少なくありません。
この記事では、胃腸炎の原因や感染対策、自宅でできるケアについて、信頼できる公的機関の情報をもとにわかりやすく解説します。
胃腸炎ってどんな病気?
胃腸炎は、胃や腸に炎症が起こることで、嘔吐や下痢、腹痛、発熱などの症状を引き起こす病気です。
原因はウイルス・細菌・生活習慣など多岐にわたりますが、冬場に特に流行するのはノロウイルスやロタウイルスによるウイルス性胃腸炎です。
多くはウイルス性によるものですが、細菌性や非感染性の胃腸炎も一定数みられるため注意が必要です。
この時期に胃腸炎が増える理由
冬にウイルス性胃腸炎が流行しやすいのには複数の要因があります。
- 空気の乾燥でウイルスが生存しやすい
- 行事やイベントで人が集まりやすい
- 寒さや疲れで体調を崩しやすい
- 手洗いが疎かになりやすい

主なウイルスと特徴
ノロウイルス
・潜伏期間:1〜2日
・症状:突然の嘔吐、下痢、腹痛、微熱
・特徴:非常に感染力が強く、家庭内感染が多い。症状が治まっても1〜2週間は便からウイルスが排出される。
ロタウイルス
・潜伏期間:約2日
・症状:白っぽい水様性下痢、嘔吐、発熱
・特徴:乳幼児が重症化しやすい。ワクチンで重症化は予防可能。
アデノウイルス
・潜伏期間:5〜7日
・症状:下痢、嘔吐、発熱
・特徴:風邪症状(咽頭炎・結膜炎)を伴うこともある。

- 嘔吐が続き水分がとれない
- 血便や高熱を伴う
- 乳幼児や高齢者でぐったりして反応が鈍い
- 尿の回数が極端に少ない
家庭でできる予防対策
石けんと流水での手洗い、調理器具の消毒、嘔吐物や便の処理時のマスク・手袋着用は基本です。さらに、次のような日常の工夫も感染拡大を防ぎます。
- 吐物が付着した衣類や寝具は、塩素系漂白剤を薄めて浸すか、熱湯で処理してから洗濯する
- トイレは便座やドアノブも忘れずに拭き取り、使用後は換気をする
- 使用したペーパーや雑巾はビニール袋で密閉し、すぐに廃棄する
- 家庭内での二次感染を防ぐには「徹底した処理」と「分けて洗うこと」がポイントです。
胃腸炎かな?と思ったら
水分補給が最優先
- 経口補水液(OS-1など)をスプーン1杯ずつ、数分おきに与える
- スポーツドリンクは糖分が多く、そのまま飲むと浸透圧の関係で下痢を悪化させることがあるため、薄めて使うと安心
食事の再開は段階的に
- 【1日目】経口補水液・白湯
- 【2日目】重湯・すりおろしリンゴ
- 【3日目】おかゆ・やわらかいうどん
- 【4日目〜】通常食へ

看病するときの工夫
子どもが突然嘔吐したときには、シーツや布団が汚れてしまうと後片付けがとても大変になりますので、あらかじめシーツの下に市販の防水シート(なければ大きめのビニール袋やレジャーシートでも代用可)を敷くと、マットレスまで汚れるのを防げます。また、吐き気や下痢が続いているときには体力を消耗しやすく、食欲も落ちてしまいますが、そのようなときに無理に食事を取らせると症状が悪化することもあるため、焦らず水分補給と十分な休養を優先し、体調の回復を待つことが大切です。
そして、高齢者の場合には嘔吐物を誤って飲み込んでしまうことがあり、それが原因で誤嚥性肺炎につながる危険性も指摘されていますので、できるだけ横向きに寝かせ、吐物が気道に入らないよう安全に配慮することが重要です。このように、年齢や体力に応じて適切な環境を整えることが、家庭での看病ではとても大切になります。
薬局でできるサポート
薬局では、市販薬のご案内だけでなく、家庭内感染の予防法や食事の工夫などもサポートできます。
まとめ
寒い季節に増える胃腸炎は、ノロウイルスやロタウイルスなどの感染性が多く、突然の嘔吐や下痢を引き起こし家庭内に広がりやすいため、石けんと流水での手洗いや調理器具の消毒、嘔吐物処理時のマスク・手袋の着用など基本的な予防を徹底してください。
また、症状が出たら水分補給を最優先にして無理な食事は避けながら段階的に回復を目指し、重症化のサインがあれば早めに医療機関に相談し、不安なときは薬局を身近な相談窓口として活用することが大切です。
監修漆畑俊哉(薬剤師)

- 株式会社なかいまち薬局 代表取締役社長
- 日本薬剤師研修センター 研修認定薬剤師
- 日本在宅薬学会 バイタルサイン エヴァンジェリスト
- 在宅療養支援認定薬剤師