HSPと診断?HSPの特徴とは
近年、「繊細さん」という言葉をよく耳にするようになりました。HSP(Highly Sensitive Person)は、心理学者のアーロン博士が提唱した「人一倍敏感な人」や「繊細な人」を表す言葉です。
今回は、HSPについて詳しく解説するとともに、HSPの特性を理解し、上手に暮らしていくためのヒントをご紹介します。
HSPとは
HSPは病気や病名ではなく、その人の生まれ持った性質、性格のことです。つまり、HSPそのものを「治療して取り除く・治す」ようなことはできません。
社会全体の15〜20%がHSPに該当すると考えられており、また、日本人は、HSPに該当する方が欧米と比較して多いと考えられています。
さほど珍しい性質ではないのですが、「人一倍敏感」、「繊細」というその性質の影響で、人付き合いが難しい、疲れるといった悩みを持つ方が多いです。
HSPについて深く知ることで、ご自身の中の「過ごしにくさ」「心身の疲れやすさ」に対処しやすくなるかもしれません。
HSPの定義と特徴
アーロン博士が定義したところによると、以下の4つの特性がすべて揃えばHSPです。
具体例を交えながら、それぞれ説明します。ご自身に当てはまるかどうか、考えてみてください。
1.感覚が敏感
感が鋭く、過敏な傾向があります。
大きな音や強い光を不快に感じる、洋服やブランケットの肌触りが気になるなど、人によって気になるものはさまざまです。こうした刺激に過敏に反応し、心身に疲れを感じてしまいます。
2.感情が豊か
自分だけでなく、他人の感情にも敏感に反応する傾向があります。
映画や本でよく感動する、他人の気持ちに感情移入しやすい、人の気持ちを感じ取りやすいなどが代表例です。自分の言葉で人がどう思うかを強く気にしてしまい、意見をなかなか言えない場合もあります。
3.深く考え、よく観察する
慎重で、周りをよく観察する傾向があるため、直感で物事を決めるのは苦手という方が多いです。
些細な変化に気がつくことができる、人が言ったことの真意を深読みできるのはメリットでもある一方、考えすぎて疲れを感じることもあります。
4.刺激が苦手、回復がゆっくり
外からの刺激に過敏に反応する影響で、疲れやすい・回復が遅いという傾向があります。
ストレスに弱いと言い換えることもできるかもしれません。自分の限界を把握して、外から受ける刺激の量を調節する必要があります。
HSPに多い病名は?
HSP自体は病気ではありませんが、その性質ゆえに罹患しやすい傾向にある疾患はあると考えられます。たとえば、「うつ病」「不安障害(不安神経症)」などが代表例です。
うつ病
うつ病は、気分の落ち込みや意欲・やる気の低下、不眠などの症状が何週間・何か月と続いてしまう状態を指します。
HSPの性質があると、些細なことを深く考えすぎて苦しんでしまったり、人の何気ない言葉を必要以上に強く受け止めてしまったりして、気持ちが塞ぐことが多いかもしれません。
誰しも、きっかけがあって気持ちが塞ぐことはあります。しかし、うつ病は単なる気持ちの問題ではなく、脳の病気です。脳内で「セロトニン」「ノルアドレナリン」の量が減ってしまっているので、自分の心がけではどうにもならなくないため、周囲のサポートや薬を使った治療が必要になります。
不安障害
不安障害は、強い不安から日常生活に支障が出る状態で、さまざまなタイプの疾患を総称した名称です。
HSPの方は、人がいつもと違う言動したり、周囲の環境が変化したりすることで不安を感じやすいといえます。その不安が強く、長期間にわたって持続すると、不安障害となることがあります。
HSPの人はこう生きる
どのように考えれば、HSPの性質を持ちながらも過ごすにくさ・生きにくさを減らすことができるでしょうか?
HSPの強み
HSPであることは、デメリットばかりではありません。強みとなる部分もあります。
- 気配り上手、思いやりがある
- 共感力が強いため、相手の立場や気持ちを推しはかり、円滑な人間関係を築くことができます。
- 慎重でミスが少ない
- 物事のリスクをよく考え、じっくり取り組むことができるため、ミスを減らすことができます。
- 誠実、丁寧
- 締切などを守り、求められる仕事をきちんとこなすことで誠実、丁寧だという印象を持ってもらいやすいです。
HSPの自分らしく生きるためのヒント
HSPの性質が強い方は、周りに無理に適応していくよりは、自分にとって無理の少ない環境に身を置くことが大切です。
環境
「人と関わったり、コミュニケーションをたくさん取らなければならない仕事は苦手」というのであれば、営業職やコールセンターのような仕事は疲れやすいかもしれません。
静かにじっくり取り組める事務仕事や、在宅ワークなどでできることがないか考えてみてもよいのではないでしょうか。
外からの刺激
外からの刺激も、自分で調節しましょう。
SNSやニュースをなんとなくずっと眺めていませんか?特にSNSには、誰かのポジティブな感情だけが載っているわけではありません。ネガティブなニュースや感想などを見ていると、疲れてしまいます。
SNSを見るのは1日1時間まで!など、決めるとよいでしょう。
リフレーミング
「リフレーミング」もおすすめです。ある物事を、別の視点から見て捉え直すという作業をリフレーミングと呼びます。
たとえば、「なんでもないことですぐに傷つく」であれば、「その経験を活かして相手を傷つけないように注意できる」「人の痛みに寄り添える」などと言い換えることができるでしょう。
「考えすぎる」ことも、「細かい部分までじっくり考えて取り組める」と言い換えれば、長所に変わります。自分の性質で、何か「直したいな、嫌だな」と思っているものがあれば、リフレーミングをしてみませんか?
薬局でできること
HSPの方は、「リラックスする」ことをよく意識するようにしましょう。そのために、アロマやマッサージ、温泉など一人ひとりいろいろな方法があるだろうと思います。薬局でもサポートが可能です。
サプリメントの選び方や医薬品との飲み合わせチェック、医療機関を受診すべきかなど、お気軽に薬剤師へご相談ください。
薬局でも買えるHSP対策グッズ
HSPの方におすすめの対策グッズをご紹介します。
めぐりズム蒸気でホットアイマスク
目を温めることで、目の周囲の血流が良くなり、眼精疲労の回復などが期待できます。また、使っている間はほかに何もすることができないので、「ゆっくり何もしない時間をとる」ことにも繋がります。
さまざまな香りが販売されているので、香りによるリラックス効果も得られるでしょう。
耳栓
HSPの性質があると、音など外界からの刺激が多い環境にいるとき、心身ともに疲れてしまう方が多いです。
耳栓などで刺激を抑えることで、疲れを軽減できるかもしれません。透明で目立ちにくい耳栓なども売られていますので、ご自身に合ったものを探してみてはいかがでしょうか。
カモミールティー
カモミールティーには、緊張や不安を和らげて、気持ちを落ち着かせる効果があるとされます。また、ノンカフェインで、交感神経の働きを抑える作用もあるため、夜のリラックスタイムにぴったりのお茶です。
リラックスにおすすめのサプリメント
リラックスするためのサプリメントもいくつか販売されています。
ドリミン
睡眠ホルモン「メラトニン」の材料であるトリプトファンが含まれるサプリメントです。考え事や不安で眠りにくいという方は、サプリメントでメラトニン生成をサポートしてみるのもよいでしょう。
セントジョーンズワート
気持ちの落ち込みや不眠の症状を和らげるとされる成分です。ただし、医薬品と相互作用が多く、医薬品の効果を弱めて治療に支障をきたす可能性もあります。使用する場合は、薬剤師や医師に飲み合わせを確認しましょう。
まとめ
今回は、近年話題の「HSP・繊細さん」について解説するとともに、HSPさんが性質を生かすヒントや、薬局でできることについてお伝えしました。
HSPであることは、病気というわけではありません。ご自身の性質を理解し、上手に付き合っていくことで、HSPを活かして過ごすことができるかもしれません。
また、HSPの方はリラックスや休憩が苦手な傾向にありますので、リラックスグッズやサプリメントを使うのもおすすめです。誰かに相談したいなというときは、薬局もご活用ください。
参考
監修漆畑俊哉(薬剤師)
- 株式会社なかいまち薬局 代表取締役社長
- 日本薬剤師研修センター 研修認定薬剤師
- 日本在宅薬学会 バイタルサイン エヴァンジェリスト
- 在宅療養支援認定薬剤師