認知症の予防と歯周病対策
我が国の総人口は、前年に比べ26万人減少している一方、65歳以上の高齢者人口は3,588万人と、前年に比べ32万人増加し過去最多となり、10人に3人が高齢者と日本は高齢化が加速しています。
健康寿命とは、寝たきりや認知症に陥っていない日常生活が制限されることなく生活できる期間と定義され、健康日本21(第2次)では、健康寿命の延伸ということが目的の1つに位置付けられています。
認知症の発症や重症化は歯周病と大きな関わりがあると近年示唆されています。
本記事では認知症と歯周病の関係性について解説します。
歯周病・認知症とは
認知症
認知症とは、十分に脳が成長発達した後に、何らかの原因で病的な慢性の知能(記憶、見当識、言語、認識、計算、思考、意欲、判断力)低下が起き、6ヶ月以上にわたり社会生活や日常生活に支障をきたすようになった状態をいいます。
平成24(2012)年に行なわれた厚生労働省の調査では認知症患者数が462万人、65歳以上の高齢者の7人に1人でした。
歯周病
歯周病とは、細菌の感染によって引き起こされる慢性炎症性疾患です。
歯と歯肉の境目の清掃が行き届かないでいると、そこに多くの細菌が停滞し(歯垢の蓄積)歯肉の辺縁が「炎症」を帯びて赤くなったり、腫れたりします。
そして、進行すると歯周ポケットと呼ばれる歯と歯肉の境目が深くなり、歯を支える土台(歯槽骨)が溶けて歯が動くようになり、最後は抜歯をしなければいけなくなってしまいます。
長期の慢性炎症である歯周組織の炎症から様々な物質が血液を介して全身の臓器に影響し,脳にも影響していることが考えられてます。
認知症と歯周病の関係性
咀嚼(そしゃく)能力の低下による脳血流量の減少により、認知機能の低下につながります。
過去の研究で咀嚼を行うことで,脳血流量が上昇することが明らかとなっており、特に前頭部において15%以上の血流量が増加したと研究が報告されています。
歯周病は悪化すると最終的には歯を失ってしまい、咀嚼機能(噛む力)が低下すると考えられ、咀嚼による脳への刺激が少なくなり認知症のリスクが上がると考えられています。
また、口腔内の状態がその後の認知症発症や認知機能低下に関連するという報告がなされるようになっており、かかりつけの歯科医院がない方は、かかりつけの歯科医院がある方に比べて認知症発症リスクが1.44倍高くなること、口腔衛生に心がけていない方は心がけている方に比べて1.76倍、それぞれ認知症発症リスクが高いことも研究報告されています。
これらのことから普段からの口腔ケアが認知症予防につながることがわかります。
歯周病を予防するには
口腔ケア
歯周病を予防し、歯の喪失を防ぐ為には普段からの口腔ケアが重要です。
歯周病の一番の予防法は食後に歯磨きをしプラークを除去することです。磨き残しがあると歯垢が残ったままになり、歯周病菌の温床になり歯周病の原因となります。
緑茶には歯周病を予防するカテキンが含まれている為、食後に歯磨きができない場合は、緑茶で口をゆすぐだけでも効果がありますよ。
食事
咀嚼(そしゃく)能力の低下は,摂取する食品の選択に影響を及ぼすことが明らかとなっており、咀嚼能力が低下することで摂取可能食品の制限や食事摂取量の減少がおこり、噛みづらい生野菜等を避け、認知症の予防に効果があるとされているビタミンC、Eの栄養が不足することで認知症発症リスクを高め、栄養不足や体重減少を引き起こします。
また、食品摂取の多様性の低下は認知機能の低下につながるとも報告されています。
野菜ジュースはビタミンC、Eが手軽に摂取できます。また、摂取する際、噛みながら飲むと脳も刺激されるので認知症予防に効果的です。
また、和食を中心とした食事にすると、よく噛むので脳の働きを活性化させる上、認知症の原因の一つとされている生活習慣病の予防にもなりますよ。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
認知症と歯周病は相関しており、認知症を予防するには普段からの口腔ケアと普段からの食生活が重要です。
普段の歯磨きや食生活をもう一度見つめ直してみましょう。また食事から十分の栄養素が摂取できない場合は、野菜ジュース等を活用してみましょう。
歯科医院では、個人に応じたブラッシング指導を受けたり、歯のクリーニングなどが受けられます。一度相談に行ってみるものいいかもしれませんね。
監修土橋弘靖(薬剤師)
- 研修認定薬剤師
- 認定実務実習指導薬剤師
- 認定がん医療ネットワークナビゲーター
- スポーツファーマシスト
- 日本在宅薬学会バイタルサインエヴァンジェリスト
- 腎臓病薬物療法単位履修修了薬剤師
- 心電図検定3級