良質で健康的な睡眠を得るための方法
十分な睡眠はとれていますか?世界各国と比較すると、日本人はダントツで睡眠時間が短いことがわかっています。
そして睡眠時間が短い影響なのか、睡眠の質を測定するガジェットがいくつも販売されていることからもわかるように、「質」を気にされている方はとても多いです。今回は、そんな睡眠の大切さ、そして、睡眠の質を上げるためのコツを解説します。
なぜ良質な睡眠が必要なのか
長く眠るだけでなく、質を高めることがなぜ必要なのでしょうか?眠りのメカニズムと合わせて解説します。
眠りの段階とその役割
眠りは、深くなったり浅くなったりを波のように繰り返しています。
睡眠の前半はノンレム睡眠を含んだ深い睡眠の波、後半はレム睡眠を中心とした浅めの睡眠の波という具合に、別の役割を持つ睡眠をしているのです。
どちらの睡眠も確保できるよう、しっかりと睡眠時間をとる必要があります。
睡眠時間の短い方は、結果としてレム睡眠が少なくなってしまい、記憶の定着がうまくいかなかったり、イライラなど負の感情が起こりやすくなったりします。
ノンレム睡眠
深い睡眠は「ノンレム睡眠」と呼ばれ、睡眠全体の50%程度を占めます。睡眠の前半で出現し、エネルギーの回復や細胞の修復、免疫機能の調節などをする時間です。
レム睡眠
浅い眠りは「レム睡眠」と呼ばれ、記憶の定着や感情の調節をする時間です。夢をみる・筋肉が麻痺状態になるといった特徴があり、睡眠全体の25%程度を占めます。
身体と心に及ぼす影響とリスク
質の悪い眠りを続けていると、さまざまな悪影響があり、日中の眠気や集中力の低下、判断力の鈍化、イライラしやすくなるといった変化は、自覚している方が多いのではないでしょうか。
実際、6時間睡眠を2週間続けると、2晩連続で徹夜をしたのと同じくらいの判断能力になってしまうそうです。
日本人の平均睡眠時間は7時間程度なので、毎日6時間以下の睡眠時間だという方は非常に多いことでしょう。
さらに、長期的には健康にも影響があり、睡眠不足は、免疫機能の低下、心血管疾患(脳梗塞や心筋梗塞など)のリスクの増加、肥満や糖尿病の発症リスクの上昇、認知機能の低下などとの関わりがわかっています。
健康的な睡眠を得る方法
睡眠の質を高めるためには、いくつかのコツがあります。寝つきが悪い、何度も目が覚めるなど、睡眠の質でお悩みの方は対策をとってみてはいかがでしょうか。
快適な寝室づくり
眠りに適した環境とはどのようなものでしょうか。
まず、温度・湿度の調節が大切で、温度はあまり高すぎず低すぎずがよく、厚生労働省によると13〜29度が適しています。その範囲で、夏は高めに、冬は低めに調節しましょう。
湿度は40〜60%に保ちます。夏は除湿機を使う、冬は部屋干しなどで湿度を上げる工夫をとりましょう。
また、寝るときには「真っ暗にする」のがよいです。
「豆電球をつけていた方が落ち着く」と感じている方もいるかもしれませんが、光を浴びていると睡眠が浅くなってしまうので、電気を切る、遮光カーテンに変える、アイマスクをするなど、暗い環境で眠ることを試してみてください。
規則正しい生活習慣
良質な睡眠のためには、日中の過ごし方も重要です。まず、朝起きたら太陽の光を浴び、起きたらカーテンを開けるように習慣化するとよいです。
太陽の光によって、体内時計のリズムが整えられるだけでなく、「セロトニン」というホルモンの分泌も促されます。
そして日中は、運動をするなど活動量をあげましょう。メリハリをつけた生活をしていれば、夜スムーズに眠りに入り、深く眠るということに繋がります。
コーヒーや紅茶、エナジードリンクなど、カフェインの含まれた飲み物は、眠る4時間前からは摂取しないようにしてください。
できれば、15時くらいから避けておくのが安心です。眠りにくくなり、睡眠の質が悪化して、翌日も眠い…という悪循環を断ち切りましょう。
なお、飲酒・喫煙は睡眠の質を下げる原因です。
タバコはすぐにはやめられないと思いますが、飲酒のペースは調節してみませんか?実際、「お酒を飲むとよく眠れる」と勘違いしている人が非常に多いのですが、全くの誤解です。
たしかに、一時的には眠くなり、スッと眠れます。しかし、睡眠は全体的に浅くなり、途中で何度も目が覚めてしまいます。
リラックス効果のある活動や習慣
眠る直前までパソコンを使って作業をしたり、スマホでゲームをしたりしていませんか?
眠りに入りやすくするためには、リラックス効果のあることをしたり、環境を整えていくことが大切です。
照明
照明は眠る2時間前から白い光(白色灯)ではなく、オレンジがかった光(電球色)に変えてみてください。照明の色を変えることで、入眠するまでの時間が短くなることがわかっていますので、ぜひお試しください。
入浴方法
入浴にもコツがあります。眠る1.5〜2時間前に、40℃程度の熱すぎないお湯につかりましょう。あまりお湯が熱すぎると、交感神経が活発になり、かえって眠りにくくなってしまいます。
睡眠障害の種類と対処法
寝付けない、眠りが浅い、疲れが取れないなど「睡眠障害」には4つのタイプがあります。
入眠障害
なかなか寝付けないというタイプの睡眠障害です。
何時間も布団の中で目が冴えてしまっているという方もいるのではないでしょうか。じつは、こういった方は、「眠れないときは布団から出る」ことが大切です。
このとき、スマホをいじったりテレビを見たりするのは目にブルーライトの光があたり、目が冴えてしまうので好ましくありません。
リラックスできるように、ツボ押しや、目を温めるアイマスクなどをして眠気を待つのがおすすめです。
寝付けないときにおすすめのツボ
井穴(せいけつ)
両手の爪の付け根付近のツボです。爪の両側から、挟み込むようにつまみ、コリコリと揉みましょう。
労宮(ろうきゅう)
手のひらの真ん中あたりのツボです。反対の手の親指を使って、ゆっくりと押しましょう。
熟眠障害
時間は取れているのに、寝た気がしない、疲れが取れていないというタイプです。
朝日をしっかりと浴びて、夜に睡眠ホルモンを分泌できるように、生活習慣を整えてください。カーテンを開けて朝日を浴びる、少し外に出て庭仕事や散歩をしてみるなどはいかがでしょうか。
また、もしかすると「睡眠時無呼吸症候群」の影響があるかもしれません。ご家族にイビキの大きさを指摘されたことはないでしょうか。治療をおこなえば、睡眠の質は改善する可能性が高いです。
中途覚醒
夜中に何度も目が覚めてしまうタイプの睡眠障害です。
睡眠中に心身がリラックスできていないことが原因かもしれません。日中に少し運動や散歩などをして体を動かす、寝る前に入浴習慣をつけるなどがおすすめです。
ドリエル
抗ヒスタミン薬の副作用である「強い眠気」を利用した、市販の睡眠薬です。ただし、睡眠障害そのものを治してくれるわけではないため、生活習慣の見直しは並行しておこないましょう。
グリシン
グリシンは、アミノ酸の一種で、睡眠のサイクルを整えたり、深い睡眠を増やしたりすると報告されています。睡眠のサポートとして、使用してみてはいかがでしょうか。
早朝覚醒
朝早くに目が覚めてしまうタイプの睡眠障害です。
寝酒をしている方は、まずはお酒をやめてみてください。お酒は、早朝覚醒や中途覚醒の大きな要因の1つです。
ちなみに、睡眠時間の長さはどうでしょうか?たとえば、21時に寝て4時に目が覚めたとしても、7時間は眠れていることになるため、時間としては十分です。
とくに、ご高齢になると、体内時計が前倒しになり、早寝早起きになるため、こういった訴えが多くなります。
お年を召されれば、若い頃と比較すると長く眠れなくなるのは自然なこと。目が覚めたのなら朝は早く起きてしまって、30分程度の昼寝をしつつ1日を過ごしてみてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、睡眠の質を高める必要性について解説し、良質な睡眠を得るための対策を解説しました。
睡眠の質を高めることで、疲れが取れるだけでなく、将来にわたって健康を維持することに繋がります。ちょっとした工夫で、睡眠の質は改善できますので、何か取り入れられそうな対策があれば試してみてください。
参考
監修漆畑俊哉(薬剤師)
- 株式会社なかいまち薬局 代表取締役社長
- 日本薬剤師研修センター 研修認定薬剤師
- 日本在宅薬学会 バイタルサイン エヴァンジェリスト
- 在宅療養支援認定薬剤師