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2023.11.21

ヒートショックの原因と症状。予防法を解説

ヒートショックの原因と症状。予防法を解説

冬に気をつけたい「ヒートショック」という現象をご存知でしょうか?

11月から2月にかけては、ヒートショックの起きやすい時期です。今回は、ヒートショックについて詳しく解説するとともに、対処法や予防法について解説します。

寒い時期を安全に乗り切るために、参考にしてみてください。

ヒートショックとは?

まずは、ヒートショックがどういった状態なのか、どのような方が高リスクなのかについて知りましょう。

ヒートショックのメカニズム

ヒートショックは、急激な気温変化によって血圧が変動して起こる体の不調で、とくに入浴時が危険です。

血管は温かくなると拡張し、寒くなれば収縮するという風に気温に合わせて動きます。血管が拡張すると血圧が下がり、ぎゅっと収縮すれば血圧が上がるというように、血管の動きに合わせて血圧も変動します。

冬場は、リビングは暖房が入って温かくても、お風呂場やトイレがとても寒いというお宅が多いでしょう。そうすると、家の中で移動するうちに気温の変化にさらされ、血圧が急激に変化してしまいます。

そこで実際に、入浴をする場合で血圧の動きを考えてみましょう。

温かい部屋から寒い脱衣所へ行くと、体が冷えて血圧がグッと高まります。その後、熱いお湯に浸かると、体が温まり血圧が急激に下がります。そして、お風呂から上がり、再び寒い脱衣所へ行くとまた体温が下がって血圧が上がります。

このように何度も血圧が変動することが、血圧の変化を起こし、心臓への負担となるのです。

ヒートショックと血圧

なかいまち薬局・ぴょんすけ

日本では、年間に約2万人の方が入浴中に亡くなっており、その多くが冬のヒートショックによるものと推定されています。

ヒートショックに注意が必要なのはどんな人?

ヒートショックになりやすい人

加齢が1つ、大きなリスク要因です。

ご高齢になると、気温を適切に認識できなくなるということが知られています。すごく暑い夏の日にクーラーをつけずに過ごしていたり、寒いのに薄着でいたりとするのは、体に備わっている「温度センサー」の働きが年齢とともに低下するのが原因です。

ですから、高齢になってきたら、ご自身で暑い・寒いを判断するのではなく、室温を見て判断する必要があります。

ヒートショックは、加齢に伴ってなりやすい傾向にはありますが、若い人でも起こりうるものです。以下のような方は、リスクが高いと言われていますので、対策を取るとよいでしょう。

  • 65歳以上
  • 生活習慣病がある(高血圧、糖尿病、脂質異常症など)
  • 不整脈がある
  • 狭心症、心筋梗塞、脳出血、脳梗塞などにかかったことがある
  • 温度の高いお湯に浸かる、サウナに入る
  • 水分をとらない、お酒を飲む
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • 肥満
  • 喫煙者

ヒートショックの症状と対処法

ヒートショックの場合、気温変化による血圧変動で、以下のような症状が出ます。

症状が出たときには、無理に「立ちあがろう・移動しよう」とせず、まずは横になるなどして体勢を低くし、症状が落ち着くまで安静にします。家族と同居しているのであれば、音を鳴らすなどして家族を呼びましょう。

もし、ぐったりしている家族を見つけた場合には床などに寝かせて、病院へ連れていくか救急車を呼びます。湯船の中で意識を失っていた場合は、湯船から出すか、出すのが難しければお湯を抜いて体が冷えないようタオルなどで温めてください

軽度〜中等度の症状

  • めまい、立ちくらみ
  • 失神
  • 吐き気
  • 頭痛
  • 動悸
  • 強い倦怠感
  • 胸や背中の痛み

重度の症状

  • 心筋梗塞(胸の痛みなど)
  • 脳卒中
ヒートショックの症状と対処法

ヒートショックの予防法

ヒートショックを予防するためにできることをいくつかご紹介します。入浴にまつわるタイミングでの発症が多いので、予防法を取り入れてみてください。

入浴前に脱衣所や浴室を温めておく

湯船にお湯を溜めるだけでも浴室はある程度温めることができます。

食後すぐの入浴を避ける

食後すぐは、全身の血液が胃に集中すると言われており、入浴で血圧が下がりやすいです。食後は、少し時間が経ってから入浴しましょう。

入浴前に体を温める

シャワーで体を温めるか、しっかりかけ湯をしましょう。

靴下やスリッパを使う

冷たい床に直接触れないよう、靴下やスリッパを使いましょう。

立ちくらみに注意

湯船から出る際には、立ちくらみを起こすことがあります。立ち上がって一息ついてから、湯船を出るようにしましょう。

浴室内で体をふく

脱衣所は室温が低いので、浴室内にタオルを持ってきて体をふくのがおすすめです。

お酒に酔った状態で入浴しない

飲酒していると血圧が下がりやすいだけでなく、脱水にもなるため、ヒートショックを起こすリスクが高まります。酔いを十分に冷ましてから、あるいは翌朝に入浴するようにしましょう。

ヒーターを設置する

温度計を設置して、リビングと10度以上の温度差ができないように意識しましょう。温度を数値で確認できると、対策も取りやすくなります。小さなヒーターを設置し、室温をあげるのがおすすめです。

なかいまち薬局のぴょんすけ
日本気象協会が発表している「ヒートショック予報」を活用するのもおすすめです。

ヒートショックに関する最新研究とトレンド

ヒートショックは、浴室やトイレなど、なかなか人目の届かないところで起きやすいため、発見が遅れてしまうことが少なくありません。

対策のために、有用と思われるグッズをいくつか紹介しますので、購入を検討されてはいかがでしょうか?

呼び出しベル

呼び出しベル

ご自宅に高齢の方がいる場合には、浴室やトイレに体調不良時に人を呼ぶための「呼び出しベル」を設置しておくのはいかがでしょうか。防水タイプのものが多く販売されています。ボタンを押すと登録されたスマートフォンに通知がいくようになっているような商品もあり、離れて暮らす場合にも有用です。

デジタル温度計

デジタル時計

気温差があるかどうかは体感だけで考えてはいけません。しっかり数値で確認することで、対策が必要だと認識することができます。温度計は比較的安く購入することができるので、部屋ごとに置けるよういくつか購入をご検討ください。

トイレ・脱衣所専用 300W ミニパネルヒーター

ヒーター

トイレや脱衣所に設置するための小さなヒーターを購入するとよいでしょう。人感センサーがついたものなどもあります。パネルヒーターであれば火事の心配もなく安心して使用できるのではないでしょうか。

まとめ

今回は、これからの寒い時期に気をつけたい「ヒートショック」現象についてご紹介しました。

高齢の方に起こりやすいものではありますが、若い方でも油断はできません。トイレや浴室など、室温が下がりがちな場所では注意しましょう。

また気温差が大きくならないよう、小さなヒーターを設置する、浴室を温めてから入る、かけ湯をして入浴するなど、十分に気をつけて生活してください。

参考

参考文献
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監修漆畑俊哉(薬剤師)

漆畑俊哉(薬剤師)
  • 株式会社なかいまち薬局 代表取締役社長
  • 日本薬剤師研修センター 研修認定薬剤師
  • 日本在宅薬学会 バイタルサイン エヴァンジェリスト
  • 在宅療養支援認定薬剤師

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