睡眠時無呼吸症候群の対策と治療方法
睡眠時無呼吸症候群という病気について聞いたことはありますでしょうか?
じつは寝ている間だけでなく、全身のさまざまな病気や症状と関連する病気です。
今回は、そんな睡眠時無呼吸症候群について、原因やからだへの影響、対策を解説します。
睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群は、寝ているときに呼吸が止まる、あるいは弱くなるのを何度も繰り返してしまう病気です。
患者数は男性の方が多く日本全体の2~5%程度の方が睡眠時無呼吸症候群だといわれていますので、ご自身の知り合いの中に、1人か2人程度は睡眠時無呼吸症候群の方がいるということですね。
睡眠時無呼吸症候群の原因
もっとも代表的な原因は「肥満」です。睡眠時無呼吸症候群の方の70%ほどは肥満とも言われています。
とくに、お腹周りではなく、首回りの脂肪が大きく関与し、体重が10%増えるごとに、空気の通り道である気道が狭くなるタイプの「閉塞型睡眠時無呼吸症候群」になるリスクが6倍にも跳ね上がることがわかっています。
また、加齢も睡眠時無呼吸症候群の発症に関わる要因の1つで、若いうちは男性の方が多いですが、加齢とともに男女差は小さくなっていきます。
男性は働き盛りの30~60歳、女性は閉経後に、睡眠時無呼吸症候群を発症するリスクが高いです。
その他、身体的な特徴も睡眠時無呼吸症候群に関与します。舌や扁桃が大きい方、鼻中隔湾曲症の方などは、睡眠時無呼吸症候群の原因になっているかもしれません。
睡眠時無呼吸症候群の症状
寝ている間のことは、なかなか気が付きにくいものです。
睡眠時無呼吸症候群の代表的な症状を紹介しますので、自覚のある方・指摘された方は、一度検査してみてはいかがでしょうか。
とくに、睡眠中の窒息感と「あえぎ呼吸」は睡眠時無呼吸症候群に特徴的な症状です。
睡眠時無呼吸症候群を放置する危険性
睡眠時無呼吸症候群は、ほかの病気との関連性もわかっています。
たとえば、呼吸が止まると、体に酸素が行き渡らなくなります。そうすると、「もっと血液を巡らせないと!」と心臓が過剰に働き、その結果、高血圧になります。
高血圧が続くと動脈硬化がすすみ、心筋梗塞や脳梗塞などに繋がるかもしれません。
また心臓の働きが徐々に悪くなる「心不全」は、近年患者数が増えている病気です。
心不全は睡眠時無呼吸症候群によって悪くなり、心不全によって睡眠時無呼吸症候群も悪くなるという悪循環に陥ってしまうことがわかっています。
睡眠時無呼吸症候群の検査と治療
睡眠時無呼吸症候群を疑われた場合、どのような検査・治療をするのか以下に解説します。
睡眠中の検査
睡眠時無呼吸症候群だと診断するためには、夜中の脳波やいびき、酸素飽和度などを測定する「ポリソムノグラフィー検査」が必要です。
一般的には入院で検査をすることが多いですが、ご自宅でおこなえるポリソムノグラフィー検査を導入しているクリニックもあります。
治療方法
睡眠時無呼吸症候群と診断された場合、重症度に応じて治療がおこなわれます。治療法として代表的なものは「CPAP(シーパップ)療法」です。
CPAP療法は、寝ている間に専用のマスクを着用し、そこから一定の圧力で空気を送り込むことで気道が塞がらないようにする治療方法で、状態次第では保険適用でCPAP療法を受けることができます。
ただし、慣れるまでは少し違和感があり、長時間つけているのが難しいかもしれませんので、短時間から練習し、少しずつ着用時間を伸ばしていけるようにしましょう。
なお、CPAP療法は睡眠時無呼吸症候群を「治す」治療ではないので、やめてしまえば症状は元に戻ってしまいます。
また、扁桃が大きい・鼻中隔湾曲症の方など、身体的な要因が原因となっている場合は、手術がすすめられることもあります。
軽症の方は、特殊なマウスピースで気道が塞がらないようにするだけでも改善がみられるかもしれません。
肥満の方は、重症度にかかわらず食事や運動習慣を見直して減量しましょう。
睡眠時無呼吸症候群を改善するためにできること
睡眠時無呼吸症候群の予防や、症状の緩和のため、ご自身でできることを解説します。減量
食べ物の種類や食べ方を変えたり、運動を取り入れたりして減量をしましょう。
野菜を積極的に取り入れる、「揚げる」ではなく「焼く」「蒸す」に変えるなど、少しだけ減量に繋がる食事を意識しませんか?
運動も、「階段を使う」、「駅から家まで早歩きにする」など、日常生活でできる範囲から少しずつ運動量を増やすことが大切です。
また、運動や食事の改善と組み合わせて漢方薬を使うことで、減量や内臓脂肪の減少効果を高めることができるかもしれません。
防風通聖散
食べすぎで便秘がちな方に向いている漢方薬です。運動や食事療法との組み合わせによって、内臓脂肪を減らす助けになります。
禁煙
タバコによって気道が慢性的に炎症を起こし気道が狭くなり、気道が狭くなると呼吸が止まりやすいので、喫煙者はそうでない人に比べて睡眠時無呼吸症候群になりやすいです。
禁煙補助薬は、薬局やドラッグストアでも購入することができますので、睡眠時無呼吸症候群の予防・改善のために禁煙にチャレンジするのもよいですね。
睡眠薬を常用しない
睡眠薬の中には、筋肉を緩める作用によって睡眠時無呼吸症候群を悪化させる可能性のある薬があります。
とくに「ベンゾジアゼピン系」と呼ばれる睡眠薬は、睡眠時無呼吸症候群の方にはあまりよくないことが知られています。
睡眠薬の種類が睡眠時無呼吸症候群に影響しないかどうか、主治医や薬剤師に確認し、影響の少ないものへ変更できないか相談してみてはいかがでしょうか。
飲酒を控える
アルコールは、睡眠薬と同様に体の筋肉を緩めます。
そのため、舌の付け根が寝ているときに喉の奥へ落ち、気道を塞いでしまい、睡眠時無呼吸症候群を悪化させてしまうことがあります。
通常、息苦しくなると目が覚めますが、アルコールを飲んで寝ていると「息苦しい」を感知するセンサーが鈍くなり、なかなか目が覚めません。
無呼吸のままでいる時間も長くなってしまい、体への負担が大きくなってしまいますので、アルコールの飲み過ぎや寝酒はできるだけ控えましょう。
まとめ
今回は、睡眠中に呼吸が止まり、疲労感が続いたり眠気が取れなかったりと影響のある「睡眠時無呼吸症候群」について解説しました。
寝ている間の呼吸やいびきについて指摘を受けた方、日中の疲れや眠気が取れない方は、睡眠時無呼吸症候群かもしれませんので、受診し検査を受けてみてはいかがでしょうか?
対策としては、減量や禁煙、アルコールを控えることなどが大切です。
日常生活でできることから「睡眠時無呼吸症候群」の対策を始めてみませんか。
監修漆畑俊哉(薬剤師)
- 株式会社なかいまち薬局 代表取締役社長
- 日本薬剤師研修センター 研修認定薬剤師
- 日本在宅薬学会 バイタルサイン エヴァンジェリスト
- 在宅療養支援認定薬剤師